仏教と占い
上座部仏教の経典では、占いはしてはいけない事になっています。ですから基本的に、仏教の修行僧は占いを行いません。平安時代に日本に伝わった宿曜道は、弘法大師・空海によって伝えられました。宿曜道とは二十七宿や七曜を使って吉凶を占うものです。七曜は、月加水目金土日の、曜日を表す七曜です。真言宗の開祖でもある空海が、なぜ占いを伝えたのでしょう。
日本の仏教には様々な経典が用いられていますが、この占いを禁じている部分を経典としている宗派はないのです。ですが、占いを禁止していることを知らなかったために日本に入ってきたわけではなく、文殊菩薩と聖人達が吉凶を占うためのものという伝説があったからだと言われています。つまり、本物の経典と間違えて持ってきてしまったという事でしょうか。それも少し違っていて、密教は仏教と分類されていますが密教はもともと、ヒンドゥー教と仏教が混合して生み出された宗教です。
仏教の開祖であるお釈迦様は、もともとバラモン教(後のヒンドゥー教)の教えが広まっている地域で王子様として生まれました。王族階級であったことは間違いないのですが、それより上のバラモン階級であったという仏典もあります。
宿曜道は、バラモン教のバックグラウンドでもあるインド占星術をもとに生まれたものです。ですがお釈迦様は、バラモン教の教えに不満を持っていて、否定的な考えを持って出家しています。特に人は平等だという立場が仏教の考え方は、カースト制とは全く異なるものです。とはいえ、お釈迦様は自分自身が新しい「仏教」という宗教を開くための出家ではありません。そもそも仏教は、お釈迦様の死後に弟子たちがその教えを広めるために始まったものです。バラモン教と仏教は異なる宗教ですが、バラモン教の影響を受けている点が数多く残っています。ですから、仏教では、バラモン教の影響を受けながらも、バラモン教に対して否定的な部分があるのです。仏教の経典にはバラモン教の呪法や占いを、行ってはいけないとも書かれています。
こうしたさまざまな事情が絡み合い、仏教だからといって占いや呪いが禁じられている宗派、はっきりと占いを否定する宗派だけではなくなったのです。